アーサー王の騎士:円卓に集った忠臣たちとその崩壊
突然ですが、読者の皆様は”騎士”と言えば何を思い浮かべるでしょうか。
度重なる十字軍遠征で名高いテンプル騎士団?
それとも、ローマ帝国崩壊以後の西ヨーロッパを統一したシャルルマーニュ大王に仕える伝説上の騎士、シャルルマーニュ十二勇士?
或いは明治以降、歴代の天皇陛下も叙勲されているイギリスを代表する騎士団、ガーター騎士団を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それらを凌いで最も有名と言えるのは、やはりアーサー王とその騎士たちでしょう。
シャルルマーニュ十二勇士やガーター騎士団の元にもなったと言われるその円卓には、多くの優れた騎士たちが所属していました。
今回はそんな、アーサー王のもとに集った円卓の騎士たちの物語を紹介します。
目次
- 円卓の騎士とは
- 円卓の代表的な騎士たち
- 円卓の崩壊
- まとめ
”円卓の騎士”とは紀元5世紀~6世紀ごろのグレート・ブリテン島を舞台として語られた”アーサー王伝説”と呼ばれる物語群の中に登場する、アーサー王のもとに集った精鋭の騎士たちのこと。
人数は作品によって異なり、キリストの使徒たちに準えて12人(アーサーを含めて13人)とされることもあれば300人以上のこともありました。
しかしその中でも共通したのは、アーサー王を含めた全員が身分の上下なく対等の席に着いて議論を行ったということです。
彼らの姿は理想的な騎士道の体現者として詩に謳われ、ヨーロッパ各地に広まっていくことになりました。
先述した通り12人とも300人ともされる円卓の騎士たち。
そのうちからメンバーを6人ほど紹介します。
アーサー
実はアーサー王もまた、円卓に加わる騎士の一人。
先述した通りブリテンを統べる王であっても、円卓に居る間はただの一騎士として同胞と言葉を交わしました。
彼は先代の王ユーサーがマーリンの魔法でコーンウォール公ゴルロイスに化け、その妃イグレインとの間にもうけた子です。
幼少期はマーリンの計らいによって騎士エクターの下に置かれ、その子ケイと共に兄弟のように育ちました。
やがて成長したアーサーは"引き抜いたものがブリテンの王になる"という岩に突き刺さった剣を抜き、キャメロットを築いて王としてブリテンを治めることになります。
ランスロット
円卓最強の呼び声も高いランスロット。
彼は現在のフランスはブルターニュの辺りに存在したベノイック王国を治めた王バンとその妃エレインとの間に”ギャラハッド”という名前で生まれました。
しかしある時隣国の王クラウダスが攻め込み、城は陥落。父王とも死に別れ、ランスロットは湖の乙女と呼ばれる妖精(或いは魔女)に預けられることになります。
これが彼が『湖の騎士』、即ちランスロットと呼ばれることになる所以。
やがて立派な騎士へと成長したランスロットはアーサー王のもとに仕官し、後に父の仇であるクラウダスをアーサー王と共に討つこととなりました。
そんな彼の物語を構成するエピソードの中に、聖杯城コルベニックの姫エレインとのロマンスがあります。
そのきっかけは、ある時その美しさに嫉妬した魔女モルガンによってエレインが煮えたぎる熱湯で生きたまま釜茹でにされていた折、ランスロットがそれを助け出したことでした。
以来エレインはランスロットを恋い慕うようになりましたが、ランスロットは既にアーサー王の妃グィネヴィアに道ならぬ愛を抱いていた為その恋に応える事はありません。
しかし、尚も諦めきれないエレインは魔女ブルゼンに助けを求め、魔法の力を借りてランスロットと一夜を共にします。
やがて生まれた子は父と同じ”ギャラハッド”と名付けられ、エレインとその父にして聖杯城の主たるペレス王の下で成長すると彼もまた円卓の一員に加わることになりました。
息子のギャラハッドはのちに聖杯を発見し、「最も偉大なる騎士」として語られることになります。
ガウェイン
さて、そんなランスロットと並んで有名な円卓の騎士と言えばやはりガウェインでしょうか。
オークニー王ロットと魔女モルガンの姉妹モルゴースとの間の子供であり、同じく円卓の騎士であったアグラヴェイン、ガヘリス、ガレスなどの兄とされる人物です。
囚われた女性を助けるエピソードを多く持つことから「乙女の騎士」とも呼ばれた彼は昼夜の運行に深いかかわりを持ち、正午にはその力が最も高まり無敵となるとも言われました。
そんな彼の有名なエピソードと言えばやはり「緑の騎士」に関する一件でしょう。
本編をすべてここに書くのは長いので割愛させていただきますが、皆さんもぜひ調べてみてください。
ガウェインの勇敢さや誠実さをその中に見ることが出来るはずです。
パーシヴァル
先述したランスロットの子供ギャラハッド、そして円卓の一人であるボース王の息子にして彼自身も同じ名前を持つ騎士ボース・”ド・ガ二ス”と共に聖杯探索の偉業を成し遂げたのがパーシヴァルです。
アーサー王の同盟者だったペリノア王の子供ともされる彼はロット王の息子たちに父を殺されると母に森へと匿われ、青年へと成長するまで世間を知らずに育ちました。
しかし森を訪れた騎士達に出会い「騎士」という存在を知ると彼らに憧れるようになり、森を旅立つとやがて円卓の一員に加わります。
そして、様々な武勲をたてたパーシヴァルはギャラハッドとボースと共に聖杯を探す冒険に出ました。
聖杯を手にしたパーシヴァルは聖杯城コルベニックの王になったとも、昇天したとも言われています。
トリスタン
騎士であると同時に優秀な音楽家にして鷹匠だったトリスタン。
「悲しみの子」を意味する彼の名は、出産の直後に夫の戦死を知らされた母親によってつけられたものでした。
母親もその後間もなくして亡くなり、トリスタンは生まれて直ぐに天涯孤独の身となります。
やがて成長し、叔父であるマーク王に仕えることになったトリスタンは王に嫁ぐアイルランドの王女、イゾルデの護衛を任せられました。
しかしその旅の最中、二人はイゾルデがマーク王との結婚の為に用意していた「愛の水薬」を誤って飲んでしまい、あってはならない恋に陥ります。
それを知り怒り狂ったマーク王はトリスタンをブルターニュへと追放しました。
後に長い冒険の果てに傷つき死に瀕したトリスタンは医術に長けたイゾルデを呼びますが間に合わず、トリスタンの亡骸の前に泣き崩れたイゾルデもまたそのまま後を追って亡くなったと言われています。
サグラモア
ここまでは所謂「英雄的」な騎士ばかり紹介してきましたが、今度は円卓の中でも三枚目の役回りの多い騎士、サグラモアを紹介しましょう。
ハンガリー王ヴラスクと東ローマ帝国の王女との間に生まれた彼は非常に優秀な戦士でしたが無鉄砲で喧嘩っ早く、物語に於いてはそこを敵に突かれて捕らえられ、主人公に救出されることがままありました。
また、馬上槍試合の対戦相手として主人公と戦い、見事に打ち負かされるのもお約束です。
そんな主人公の強さを引き立てる「かませ犬」にされることも多いサグラモア。
伝説の騎士たちが揃う円卓の中にも、少し気の抜ける彼のような人物もいるのです。
さて、このように英傑ぞろいで盤石にも思える円卓でしたが、そんな彼らの栄光にも終わりが訪れます。
そのきっかけは、ガウェインの弟にして自身もまた円卓に参ずる騎士の一人であったアグラヴェインがランスロットとグィネヴィアの不倫関係を告発したことでした。
貞節を破ったとして処刑されかけるグィネヴィアを救出に向かうランスロットでしたが、その過程で王妃の護送についていた円卓の仲間にしてガウェインとアグラヴェインの弟、ガレスとガヘリスを殺してしまいます。
その後ランスロットはグィネヴィアを連れてフランスに逃亡し、復讐に駆られたガウェインもまた後を追って渡航。一騎打ちにまで持ち込みますが惜しくも敗れ、返り討ちにされてしまいました。
かくしてフランスに渡ったランスロットと戦争状態に陥ったアーサー王。しかしその隙をついて、今度は留守にしていたブリテンで息子のモードレッドが反旗を翻します。
慌てて踵を返したアーサー王とモードレッドはカムランの丘で戦い、遂には相打ちになりました。
かくしてアーサー王は斃れ、円卓は崩壊することとなったのです。
円卓の騎士たちの物語、いかがでしたでしょうか。
騎士の代表とでもいうべき彼らの物語は乙女や貴婦人との間に繰り広げられるロマンスや、或いは邪悪な竜や魔女を打ち倒す英雄譚によって彩られています。
しかしそんな偉業を次々と成し遂げてきたいわば英雄たちのドリームチームであった円卓も、些細なほころびによって無残にも崩れ去ってしまいました。
ちなみに今回出てきた以外にも、円卓にはグィネヴィアの育ての親であるカドールやアーサー王の剣エクスカリバーを湖に還す役を担った隻腕の騎士ベディヴィアなど、まだまだ個性豊かな人物が名を連ねています。
勿論、彼らのエピソードもまた面白いものばかり。
是非この機会に一度、彼らについて調べてみてはいかがでしょうか。











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