日本神話の天地開闢:世界の始まりから伊邪那美と伊邪那岐の神生みまで


目次


  1. 天地開闢かいびゃく別天津神ことあまつかみ
    • 天地の始まり
    • 最初に現れた神々
  2. 神世七代かみのよななよと日本列島の誕生
    • 神世七代の系譜
    • 天沼矛あめのぬぼこ淤能碁呂オノゴロ
  3. 神生み神話と黄泉降り
    • 伊邪那美の死
    • 黄泉降り
    • 三貴子みはしらのうずのみこの誕生
  4. まとめ

  1. 天地開闢かいびゃく別天津神ことあまつかみ

  2. 天地の始まり


    「日本書紀」や「古事記」、日本各地の歴史を記した複数の「風土記ふどき」などに語られる日本神話

     そんな日本神話の世界の始まりは神の手によるものではなく、自然な成り行きの結果とされました。

     混沌としていたものが分離し、清浄なるものは上方へと昇って天となり、黒く濁ったものは下方へと降りて行って地となったのです。

     そしてその天と地との間に葦の芽が生じ、これが神となりました。

     日本神話においては神によって世界が創られたのではなく、世界の発生の後、その中に神々が生じたのです。

    最初に現れた神々


     天地開闢の後、世界に最初に現れた神々が別天津神ことあまつかみと呼ばれる存在でした。

    最初に造化ぞうかの三神」と呼ばれる、天之御中主アメノミナカヌシのかみ高御産巣日タカミムスヒ神産巣日神カミムスヒの三柱の神々が生まれ、次いで宇摩志阿斯訶備比古遅ウマシアシカビヒコヂ天之常立アメノトコタチが登場します。

     タカミムスヒとカミムスヒは対となる天と地、男と女の結びつきを象徴する神。

     一方でアメノミナカヌシは至高の神であるということ以外の情報がなく、一説には中国の陰陽五行説の影響で神の数を陽数たる奇数にするべく、後から付け足された神だともいわれます。

     そして、ウマシアシカビヒコヂは活力や生命力を司る神であり、アメノトコタチは天の永遠性を表す神。

     これらの神々は、目に見える活動を行うわけではなく、静かに現れてすぐに隠れる存在とされました。


  3. 神世七代かみのよななよと日本列島の誕生

  4. 神世七代の系譜


     別天津神が現れ、そして隠れたそののち、新たなる七世代の神々が誕生します。

     初めに「日本書紀」にいては「最初の神」とされる国之常立クニノトコタチ

     続いて雲の神格化された神と言われる豊雲野トヨクモノが現れ、続いて兄妹である五組十柱の神々が現れました。

     ずは大地を構成するうきと砂の神である宇比地邇ウヒヂニ神・須比智邇スヒチニの兄妹が。

     次にその大地に芽生えた生命を表す角𣏾ツノグイ神・活𣏾イクグイ兄妹が生じ、

     その後に固まった大地を示す意富斗能地オオトノヂ神・大斗乃弁オオトノベ兄妹が続きます。

     そして欠けのない人間の体を意味する淤母陀流オモダル神・阿夜訶志古泥アヤカシコネ兄妹が生まれ、

     最後に伊邪那岐イザナギ神と伊邪那美イザナミの兄妹が誕生しました。

     これら二柱と五組十柱の神々は、神世七代かみのよななよと呼ばれることになるのです。

    天沼矛あめのぬぼこ淤能碁呂オノゴロ


     神々に命じられたイザナギとイザナミは、当時はまだ不定形であった大地を固めるべく天と地とを繋ぐ天浮橋あめのうきはしに立ち、天沼矛あめのぬぼこを海へと差し込みました。

     すると矛を回した際に滴り落ちた塩の雫が固まり、淤能碁呂オノゴロが誕生します。

     オノゴロ島が生まれると、二柱はそこへと降り立ち、八尋殿やひろどのと呼ばれる巨大な神殿と天御柱あめのみはしらと呼ばれる柱を建て、夫婦の契りを交わしました。

     しかし、二柱の間に生まれた蛭子ヒルコ淡島アワシマは両方とも不具の姿で生まれてきます。

     占いによって、夫婦の契りの折にイザナミから声をかけたことが原因だと知った二柱は、結婚の儀式をやり直しました。

     その結果、今度は健康な子供として淡道之穂之狭別島アワヂノホノサワケノシマ(現在の淡路島)を産み落とします。

     これを皮切りに、次いで伊予之二名島イヨノフタナノシマ(現在の四国)、隠伎之三子島オキノミツゴノシマ(現在の隠岐島)、筑紫島ツクシノシマ(現在の九州)、伊伎島イキノシマ(現在の壱岐島)、津島ツシマ(現在の対馬)、佐度島サドノシマ(現在の佐渡島)、大倭豊秋津島オオヤマトトヨアキツシマ(現在の本州)と次々と子供をもうけました。

    「古事記」に於いて夜斯麻久爾ヤシマグニ「日本書紀」では「大八島おおやしまと呼ばれたこれら八つの島々が、現在の日本のもととなったのです。

     また、この後にもイザナギとイザナミは六つの島々を生み出しました。


  5. 神生み神話と黄泉降り

  6. 伊邪那美の死


     「国生み」を終えたイザナギとイザナミは、さらに「神生み」を行います。

     二柱の間には海の神大綿津見オオワタツミや樹木の神久久能智ククノチ、のちの瓊瓊杵尊ニニギノミコトの逸話に登場する木花之佐久夜毘売コノハナノサクヤビメ岩長比売イワナガヒメの父親である大山津見オオヤマツミなど、様々な神が生まれました。

     しかし、その最後に悲劇が起こります。

     火の神である火之迦具土ホノカグツチを生む際、イザナミは産みの苦しみで大火傷を負い、そのまま命を落としてしまったのです。

     このことに怒り狂ったイザナギは携えていた剣天尾羽張あめのおはばりを抜き放ち、ホノカグツチの首を切り落としてしまいました。

     首を刎ねられたホノカグツチの遺体からは数多の神が生まれ、イザナミの遺体に縋ったイザナギのまなじりから零れた涙もまた、水の神泣沢女ナキサワメとなったと言われています。

    黄泉降り


     イザナミの死後、イザナギは最愛の妻を取り戻そうと死者たちの住まう「黄泉の国」へと向かうことを決めました。

     黄泉の国に通ずる扉の前にまで辿り着いたイザナギは、扉の向こうのイザナミに帰還を願います。

     しかし、彼女はこの時既に黄泉の国の食事を口にし、黄泉に縛られてしまっていました。

     イザナミはこれから地上に帰れるように黄泉の神々に掛け合ってくること、それまで扉を決して開いてはならないという事をイザナギに言い含めます。

     イザナギは言うことを守り、長い間待っていましたが、死に別れた伴侶との再会が待ち遠しいあまりにとうとう扉を開けてしまいました。

     そこに待っていたのは体を腐れさせ、八種雷ヤクサノイカヅチに囲まれたイザナミの姿。

     醜い姿を夫に見られたイザナミは怒り狂い、黄泉の住人たちをイザナギへと差し向けます。

     イザナギは降りてきた黄泉比良坂よもつひらさかを急いで逃げ戻り、千引の石ちびきのいわと呼ばれる巨大な岩で黄泉路の入口を塞ぎました。

     この際、イザナミはイザナギに「この仕打ちの報いに毎日1,000の人間の命を奪ってやる」と投げかけ、イザナギはこれに「ならば私は人間たちに産屋を作らせ、毎日1,500の命を生ませよう」と返したと言われています。

    三貴子みはしらのうずのみこの誕生


     黄泉の国から帰還したイザナギは、穢れを払うため身を清める禊を行いました。

     するとこの過程で、左目を洗うと天照大御神アマテラスオオミカミが、右目を洗うと月読命ツクヨミノミコトが、鼻を洗うと建速須佐之男命タケハヤスサノオノミコトが、それぞれ生まれたといいます。

     これら三柱の神は後に三貴子みはしらのうずのみこと呼ばれました。

     天照大神は太陽の神で、高天原を統治し、後の日本神話全体の中心的な役割を担う存在です。

     また、月読命は月の神であり、須佐之男命も後に多くの伝承に登場する海や嵐の神として知られています。

     彼らは、日本神話の中でも特に神聖視され、日本文化や信仰においても非常に重要な存在となりました。


  7. まとめ

  8.  天地開闢から始まり、別天津神の出現、そして神世七代を経て、イザナギとイザナミの国生み・神生みまでを紹介してきました。

     『古事記』や『日本書紀』といった古代の文献に詳しく記されたこれらの神話は、日本神話の基本と言える大切な物語です。

     イザナギとイザナミによる「大八島」の創造や、イザナミの死と黄泉の国の物語、そしてイザナギ命が行った禊による三貴神の誕生などのエピソードは、神話が単なる物語ではなく、現代にも受け継がれる日本の文化や伝統に深い影響を及ぼしました。

     日本神話に描かれた天地開闢や国生み、神生みは、単なる過去の物語ではなく、現代の日本社会にも根付く信仰や価値観の礎となっています。

     それらを通じて、日本の歴史と文化に触れることは、私たちが自身のアイデンティティを知る一助となるでしょう。

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